「脳‐身体‐心」の治療室:痛み学NOTE
49. トリガーポイントはどのようにして作られるのか③
③ TrPの電気活動と責任TrPができる仕組み
筋収縮のプロセスの中で、エネルギー危機に関わるのは前述した第1~3のステップにおいてである。
Travellは、ATPが不足(エネルギー危機)によって、過剰な筋収縮活動が持続すると考えた。
その基盤となる作用に関わるのがCaイオンとATPである。筋の外傷、微損傷、オーバーユースでも、筋小胞体からCaイオンは過剰に放出される。
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筋の外傷が起こると周辺に痛覚物質が放出されるのだが、ここで問題とするのはCaイオンが過剰に放出されることによって起こる「拘縮:constracure」という現象である。拘縮では、活動電位なしで生じる持続性、非伝播性の可逆的収縮が起こる。
要するに、「拘縮」は「筋収縮」と違って、中枢神経系の介入による制御を受けない現象だということだろう。
ATPがなくなると、アクチンとミオシンは硬く結合した状態になり、引っ張っても伸びない状態が作られるのである。またATP不足は、アクチン周辺に放出されたCaイオンが筋小胞体へ取り込まれるのを阻む。だから収縮が続く。拘縮ができる。
この拘縮によって、血流が悪くなる(虚血)。痛みが出る。更にエネルギー危機が増大する。血流の障害はATP産生が減少するため永続化する。痛みの悪循環のはじまりである。
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この「筋拘縮」の発展的病理こそが「索状硬結」のこととされてきたようだ。
確かに、トリガーポイントの特徴を単直に言えば「硬結」のことだろう。「索状」でもある。
しかも、電気生理学的に電気活動が計測されないのだそうで、電気的興奮による筋収縮とは違うことになる。だから「筋拘縮」と「索状硬結」は同類の表現である。
トリガーポイント仮説には、こうした曖昧な要素が随所にある。
だからメディカルの領域でも定着されにくいのだろう。臨床的所見が注目されているが、組織学的・生理学的研究はこれからなのだろうと思う。
ところ近年、トリガーポイントから電気活動を記録した研究が出てきた。日本では、川喜田健司先生らの率いる明治鍼灸大学・生理学教室における研究はその筆頭である。その電気活動の波形が、運動点(運動終板)で計測される波形に類似しているのだそうだ。
だからと言って、TrPが運動点だけに出来るわけではない。ここも曖昧である。
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そもそも「運動終板説」が出たのは1993年で、D. R. HubbardとG. M. Berkoffの仮説とされる。筋紡錘に分布する交感神経の刺激で活動電位が発生し、反射性にシナプス内にアセチルコリンが過剰に放出される。すると筋の持続収縮が起こるのだとする仮説であるが、では圧痛のある硬結はどう説明するのだろう。
硬結部位からの電気活動は計測されても、周辺の筋組織からは計測されていない。
したがって筋紡錘での活動電位と考えたわけだが、「エネルギー危機説」と「運動終板説」の両者の欠点を補う形で、「統合仮説」が流通しているようだ。
「統合仮説」はTravellの共同研究者であるSimonsらの主張である。
実験的研究による根拠は、①トリガーポイントから計測される電気活動が終板電位に似ていること、②アセチルコリンを過剰分泌状態にすると索状硬結ができること、③運動終板では痛覚閾値が低い、ということのようだ。
上の図は「筋骨格系の触診マニュアル」のものである。
この筋線維の拘縮は硬結のある索状になる。
これがセントラルTrPで、その部位のサルコメアは短縮している。
つまり中心に引っ張られている。
するとその前後のサルコメアは中心への引力を拡散できずに伸張される。伸張性の収縮が起こる。
この索状硬結によって、筋原線維の起始と停止にまで伸張する力が及ぶ。
この牽引力によって腱組織が障害され「付属TrP」が形成される。
また同じ筋内や他の筋肉にサテライトTrPも形成される。
これらの付属TrPは、セントラルTrPから随伴したものである。
だから、鍵を握る「責任TrP」とされるのだろう。
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