言語聴覚障害とは
言語聴覚障害と一口に言ってもその内容は様々です。
一般的には、聞こえの問題(聴覚障害)、ことばの理解や話す能力の問題(言語障害)、
発音の問題(構音障害)として理解されますが、これに加えて、声の問題(音声障害)、
食べることの問題(摂食・嚥下障害)が含まれます。
言語聴覚障害は
乳幼児から高齢者まで幅広い方々を対象に、いろいろな原因によって起こります。短期間の訓練で治る場合もありますが、全体としては長期にわたり、生涯続くことの多い障害です。
従って、その理解とケアには障害についての知識と共に、障害を持たれた方と一歩一歩ともに歩むことが必要になります。
訓練によって機能や障害そのものを軽減する取り組みは重要ですが、 それだけではなく、ライフサイクルに応じて生活の質(QOL)を高めること、住んでいる地域での生活を充実させることも同じように大切なことです。
このような障害でお悩みの方は、まず医療機関・療育機関を受診されることをお勧めします。
言語聴覚士が関係する診療科には、耳鼻咽喉科、リハビリテーション科、神経内科、小児科、口腔外科、精神神経科などがあります。
言語聴覚士が行う検査や訓練の対象となる障害には以下のようなものがあります。
@聴覚障害 A言語発達遅滞 B脳性麻痺による言語障害 C失語症 D高次脳(神経)機能障害 E音声障害 F構音障害 G吃音 H摂食・嚥下障害
以下にこれらの障害について簡単な説明を致しますが内容については、次の本を参考・引用いたました。詳しくは以下をご参照ください。
「言語聴覚療法臨床マニュアル 第2版」 小寺富子監修 協同医書出版社
「失語症の人と話そう」 地域ST連絡会編 中央法規出版
「言語聴覚士の仕事」 日本言語療法士協会編(旧) 朱鷺書房
「高次脳機能障害」 長谷川賢一編著 建帛社
「失語症と高次脳機能障害」 鹿島晴雄・種村 純編集 永井書店
「脳の障害と向き合おう」 中島恵子著 ゴマブックス
「絵でわかる言語障害」 毛束真知子 著 Gakken
言語聴覚士 ST(Speech Language Hearing Therapist)
1997年に言語聴覚士法が制定されました。
音声機能、言語機能、又は聴覚に障害のある者についてその機能の維持向上を図るため、言語訓練、その他 訓練、これに必要な検査及び助言、指導その他の援助を行うことを業とする者をいう。
厚生大臣の免許を受けて名称を用いることが出来ることになっています。
「言語聴覚障害を理解するための基礎知識」
ことばを伝える、ことばを理解するとは
ことばを伝えるには下の図のようなことばの鎖が考えられます。
話し手は言いたいことを考え(心理学的・言語学的)、話すための器官を使って(生理学的)ことばを発し、音波(音響学的)が聞き手の耳に入る。
聞き手はそのことばが耳に入りその情報を脳に伝える(生理学的)、伝わったことばは脳のレベルで(言語学的・心理学的)情報処理が行われ、話し手のことばを理解する。この繰り返しが人のコミュニケーション過程です。
(言語聴覚士の仕事P19のことばの鎖)
話すための器官
脳の言語中枢で考えられたことばは発声発語器官である下の図の器官に運動の命令として伝わり、ことばが音響学的に発声される。
人が話すには、食べるための器官や呼吸のための器官を楽器のように使いこなして、微妙な動きが音声を作り出し意思を伝達している。
日本語のなかには109音節があるが、それらの音節が組み合わさってことばが生まれている。
(言語聴覚士の仕事P21の発声発語器官)
話すときの口の動き
下の図は /Ka/ を発声したときの口の動きを示している。舌の奥の方が盛り上がり舌の筋肉が強く緊張して口の天井に触れ、空気を遮断した後に開放と共に母音の/a/が作られて、日本語の/か/が発声されている。
肺の中の空気が呼気となって声帯で原音が発生し、それを口の中で加工してさまざまな音色に変え、ことばは作られる。
(言語聴覚士の仕事P21の話すときの口の動き)
ことばを聞く耳の構造
耳たぶで音を集め、鼓膜に伝わり、中耳の中で音を大きくし内耳に伝播し、蝸牛から聴神経を介して脳へ情報として認知される。
耳は音情報の入り口です。
(言語聴覚士の仕事P22のことばを聞く)
以上は、ことばを聞いたり、話すための基礎的な機能です。
先天的な疾患や後天的な疾患または外傷がない場合、こどもの極端な環境の不適切さがない場合は、人としてこれらの機能が発達していきます。
しかし、不幸にしてこれらの機能のいずれかが障害(傷害)されると、さまざまな形で言語聴覚障害が生じます。
次は、言語聴覚障害の内容について簡単な説明をします。
@聞こえの障害ー難聴
A大人のことばの理解と表現の障害ー失語症
B子どものことばの理解と表現の障害ー言語発達の遅れ(知的障害・自閉性障害・学習
障害・不適切な環境) 、脳性麻痺による言語聴覚障害、子どもの構音障害(機能性構
音障害・口蓋裂による構音障害・)、子どもの失語症
C声や発音の障害
D食べることの障害
E高次脳機能障害
無料で内気以上
基礎知識の耳の構造のいずれかの器官や機能に疾患があると聞こえの障害が出ます。難聴は聴覚障害と言われますが、聴覚は一人ひとりの感覚的認知機能に関係し聞こえの感覚的なものは個々人によって微妙な差があると予想されます。
障害の種類は伝音性難聴、感音性難聴、混合性難聴に区別されます。
障害の程度は軽度、中等度、高度、重度に分けられます。
(言語聴覚士の仕事P34の音の伝わり方)
伝音性難聴(外耳・中耳の疾患) ・ 感音性難聴(内耳・聴神経の疾患) ・ 混合性難聴(伝音系・感音系の両疾患)のように障害された器官によって難聴の現れ方が違います。
難聴の程度によって補聴器の種類や有効性が異なります。最近では人口内耳の発達により先天的な聴覚障害のお子さんでも正常な言語機能が獲得されるようになりました。 言語聴覚士は聴覚機能の評価や聴覚トレーニング・補聴器指導・代替コミュニケーション手段の獲得指導や心理的支援・家族指導などを行っています。
失語症は一度獲得した言語機能が脳の疾患(一般的には脳卒中と言われる脳血管障害・脳腫瘍など)や頭部外傷(交通事故外傷・転落など)によって障害されたものを言います。
下の図は、脳の部位による言語機能の違いを表しています。
脳は、前頭葉(運動指令の中枢)、側頭葉(聴覚認知の中枢)、後頭葉(視覚認知の中枢)、頭頂葉(感覚認知の中枢)に分かれます。
また、右半球(注意・視空間認知)と左半球(言語・行為)に分けられ。失語症は主に左半球の障害で起こります。
(会話パートナー養成テキストの図1左脳の働き)
失語症状の説明
言語機能は、ことばを聞いて理解する機能 ・ 文字を見て理解する機能 ・ 話す機能 ・ 文字を書く機能 の四つの側面と計算機能を言います。
脳の損傷の部位によって障害の現れ方が違います。
失語症状には下の図のような理解障害、錯語、喚語困難がみられます。
@言われたことばの意味が全く理解出来なくなる重度なレベル(下の図の理解障害)
から不完全な理解になる程度まで。
A言いたい事がことばで言えなくなる、または不完全なことばになる。(下の図の錯語
や喚語困難)
個々人の障害の程度や質は一人ひとりで異なります。
具体的に言うと、日常の会話、世間話や社会の出来事についての理解が不可能あるいは不完全� �なること、また言いたいことを全く言えないかあるいは不十分にしかことばで伝えられない状態をいう。また文字を読む事(意味理解・音読)や書く事にも同様の障害が現れます。
言語聴覚士の仕事P42
(失語症の人と話そう P6 主な言語症状)
A少し大きな声ではっきりと話しかける。
B仮名文字は難しい、漢字や図式化して説明や話しかけをする。
C説明や話しかけは繰り返すと理解しやすい。
D「はい・いいえ」で答えやすい話しかけ方の工夫。
E話題を急に変えない、「話は違いますが」と前置きをして変えると良い。
F錯語に気をつける。違うことのつもりでいることがあるので結果や行動で確認する。
G子ども扱いしない。
H本人に合ったコミュニケーションノートが有効なことがある。
I落ち着いた態度で接する。
J相手を理解する洞察力や感性を磨き、ことばに頼らないで気持ちを汲み取れるよう
� �する。
B子どものことばの理解と表現の障害―言語発達の遅れ
人が生まれてからことばを獲得するまでを簡単に説明します。
子どもは親を中心に周囲の人のことばを聞き、物や場面・状況を理解出来るようになると、徐々にことばが発達していきます。親は子どもを見つめ、まだ話さないわが子にいろんなことを話しかける。それを聞くこどもは「アブ アブ ブー」と返事のようなことばを発していく。理解がさらに進むと大人のことばに近づけようといろんな音を発するようになる。それが相手の反応によって強化されことばが定着していきます。ことばは人と人のコミュニケーションの手段として発達していきます。
下の図は、親子の会話の場面を示しています。
母親が子どもに「犬がいるね」と話しかけると、子どもは「イヌ!」といい、そばにいるイヌを理� �する。この会話の場面では子どもは親のことばを理解し、それに対してことばで答えている。 親は子どものことばを聞いてイヌがわかっていると思う。これは理解や表出に問題が無い状態です。
人はこのように相手との会話を通じてことばが発達していきます。
(言語聴覚士の仕事P51の健常児の場合)
言語発達障害とは、
以下のようなことが原因で同年齢の子どもに比べて、話しことばや文字ことばの理解と表現・使用に遅れや困難を示す子どもたちを包括的にとらえた、幅広い症状名です。
言語発達障害をもたらす要因
@聴覚障害 A知的障害 B自閉性障害 C学習障害 D不適切な環境
E脳性まひ、後天性失語などの脳損傷
言語発達障害の症状を次に示す。
下の図は
無料のベストadvocareの減量製品をオンラインで言語理解の障害を示しています。知的障害、後天性失語などでみられま
す。
ことばの意味が理解できない状態です。障害のされかたで理解障害には差が見ら
れますが、単語はわかるけど、文章は理解できないこともあります。
(言語聴覚士の仕事P53の言語理解の障害)
下の図は言語表出の障害を示しています。知的障害、後天性失語、脳性まひなどでみられます。
言いたいことはわかるけど正しいことばにならない、言葉数が少なく表現できない、不明瞭なことばで相手に通じないなどの状態です。
(言語聴覚士の仕事P53の言語表出の障害)
知的障害
ことばの理解・表現が遅れるとともに発達のスピードが遅く、獲得される言語発達に限界があります。限界はあるものの、その言語獲得のプロセスは健常児とほぼ同じ順序で発達するといわれています。ことばはそれ単独で発達するものではないので、言語訓練だけでなく、発達に適した社会生活、運動発達の促進など全体的に働きかけることが大事です。また、難聴、口蓋裂、自閉性障害、脳性まひ、注意欠陥・多動性障害などを合併することもあります。
人への興味や関心が乏しい対人関係の障害で、共感したり、伝え合うなどのコミュニケーション関係の障害や特定のものや活動に興味・関心が限定されるなどの特徴があります。自閉性障害の方に合わせた場面の設定や働きかけと共に言語とコミュニケーション機能の発達を促進させることが必要です。
下の図は対人関係の障害を示しています。
「犬がいるね」と話しかけても、自分の興味の殻に入り人との会話が出来ない状態を示しています。
(言語聴覚士の仕事P54の対人関係の障害)
学習障害
全般的な知的機能は正常であることが前提条件です。その中で、話す、聞く、読む、書く、計算、推論するなどの各能力のいずれかが選択的に障害された状態をいいます。読み書きの障害、書字のみの障害、これらに話しことばの発達障害が合併する場合があります。
不適切な環境による言語発達障害
ことばの発達は出生直後から子どもと周囲の大人(一般的には母親)との相互作用を通して可能になります。母親との愛着関係の成立と感情の交流や視線・指差し・発声などによるコミュニケーションがことばを獲得する土台です。これらの環境が用意されないことによってことばやコミュニケーション機能の発達に遅れや障害をおこします。
脳性まひによる言語聴覚障害
脳性 まひは、「受胎から新生児期(生後4週間以内)までの間に生じた脳の非進行性の病変によって、永続的な運動と姿勢の異常をともないます。
その症状は満2歳までに発現します。進行性疾患や一過性運動障害または将来正常化すると思われる運動発達遅延は削除します。
脳の病変による姿勢・運動障害が主症状ですが、知的障害、視覚障害、聴覚障害、呼吸障害、摂食・嚥下障害、てんかん発作などを合併することが多く見られます。
診断や療育指導は各科の医師・歯科医師、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、看護師、臨床心理士、保育士、栄養士などによるチームでアプローチしています。
言語聴覚士は聴覚機能の評価、言語発達の評価と促進、コミュニケーションの基盤づくり、摂食・嚥下機能の評 価と指導などを他職種と連携しながら行います。
子どもの構音障害
子どもの構音障害には、「機能性構音障害」「口蓋裂による構音障害」「口蓋裂と同様の症状を示す疾患による構音障害」とがあります。
機能性構音障害
構音(発音)障害は聴覚障害、発声発語器官の麻痺、口蓋裂、知的障害などによっても起こりますが、これらの原因がないものを機能性構音障害と呼びます。
ことばの発達とともに発音も分化していき、早く獲得する音、遅く獲得される音とある程度順序性がありますが6歳前半までには完成されるとされています。 しかし発音を獲得する過程で何らかの原因で誤った発音が身についてしまった場合を機能性構音障害といいます。
機能性構音障害には二つのタイ プがあります。
@発音の獲得が遅く「赤ちゃんことば」のような未熟な発音がある年齢になっても続きます。主としてカ行・サ 行の獲得が遅れるタイプです。
A正常とは異なる特有な発音の仕方を示し、それにはいくつかの種類があります。舌を主とする発声発語器 官の運動が正しく行えないタイプです。
言語聴覚士の訓練により治ることが多い、治癒率の高い障害です。
口蓋裂による構音障害
口蓋裂は胎生期になんらかの原因によって生じた口腔の形成異常で、口唇裂を伴う時と伴わない時とがあり、適切な時期に手術が必要になります。
主な症状は 口蓋裂による鼻咽腔閉鎖機能不全(発音のための空気が鼻に抜ける)によって発音に障害が出ます。それに加えて、哺乳・摂食� ��害、耳鼻科的疾患(滲出性中耳炎の合併)、言語発達の問題、歯列や咬合異常、心理的問題などをおこします。
口蓋裂の治療は乳児期から青年期までの長期間にわたり、外科、耳鼻科、歯科、言語聴覚士、看護師などのチームアプローチが必要です。
言語聴覚士は養育者への心理的援助、子どもの聴力管理、発達支援を行いながら、発音の経過を観察し、必要に応じて構音訓練を行います。
口蓋裂と同様の症状を示す疾患による構音障害
出生直後に明らかな口蓋裂は認められなかったにもかかわらず、口蓋裂と同じ発音の障害を生じる疾患があります。
ことばを話し始めてから発音の異常に気づくため発見が遅くなります。
原因は、粘膜下口蓋裂、先天性鼻咽閉鎖不全です。
治療 は医学的な検査と場合によっては手術が必要になります、
術後は言語聴覚士による発音の評価と訓練が必要です
下の図は、声が作られ発音されて、ことばを作り出す発声・発語器官を示しています。これらの運動は脳から指令が出ています。
ことばを発するには、脳からの指令が発声発語器官にまず伝達され → 横隔膜が収縮し肺から空気が送られ → 声帯が振動し原音が作られ → 口腔内で舌や口唇で加工し → ことばとして連続した運動が起きて → コミュニケーションの道具となります。
高齢者の間で落ちる
(言語聴覚士の仕事P60の発声のしくみ)
声や発音の障害には、脳や発声発語器官の疾患によるもの、発声・構音器官に運動障害を起こした結果によるもの、幼児期の誤った発音・構音の学習によるものがあります。(運動障害性構音障害、機能性構音障害、口蓋裂による構音障害、脳性麻痺による構音障害、音声障害など) また、発話の流暢性の障害として吃音があります。
これらの器官の一義的目的は生命維持のための呼吸と食べるための器官です。疾患によっては発声・発音の障害とともに食べることや呼吸にも障害が出ることがあります。
人は、この呼吸と食べるための器官を高次な脳機能の意思伝達の道具として発達させました。
発音に障害が出ると人と人のコミュニケーションに障害が出ます。
運動障害性構音障害 発声・発語器官の運動は、脳からの指令を伝える神経系と運動を行う筋肉系の組み 合わせで実現します。このどちらかの病変により運動障害が生じた結果起きる発音の障害をいいます。原因は 脳疾患、筋疾患、外傷などです。
器質性構音障害 発語器官である舌、顎、軟口蓋などの 形の異常や欠損により起きます。先天的なものに 口蓋裂、先天性鼻咽腔閉鎖不全症があります。後天的なものは口腔の腫瘍などの手術後に起きます。口腔 の腫瘍では構音障害だけでなく摂食・嚥下障害を伴うことが多く、いずれの障害も言語聴覚士により評価と 訓練が行われます。
音声障害 声の質の障害です。ガラガラ声、かすれた声など声の質や高さ、持続時間が正常範囲を超えてい てコミュニケーションに支障をきたす状態。原因は声帯ポリープ、声帯結節、喉頭麻痺などの疾患と声の使いす ぎや誤用によるものです。
吃音 吃音は幼児期に起こります。2歳から4歳が多く、7歳までに現れます。症状は、「僕」のことが、「ボボ
ボク」のような音の繰り返しになったり� ��「ボ〜ク」のような音の引き伸ばしがみられたり、音が阻止されて出て こない状態です。ただし、幼児期は一般的に発語のために必要な運動技能が未成熟なので、なめらかでない 非流暢な発話は吃音でなくても多くみられます。正常範囲内なのかどうかの判断が必要です。
発話に必要な運動技能および様々な単語を使 って長い文を作り、複雑な内容を伝えられる能力が成人と同
じレベルに達するのは、9歳から11歳頃とされています。発話能力の発達は長い目でみて対応する必要があ ります。言語聴覚士は幼児期、学齢期、成人期に合わせた取り組みを行っています
なお、機能性構音障害、口蓋裂による構音障害は、子どものことばの障害をご参照ください。
下の図は、音声障害に対する声の衛生指導� �構音障害に対しての発音の仕方の説明をしているところです。
(言語聴覚士の仕事P62の声の衛生指導) (言語聴覚士の仕事P63の発音の誤りを修正)
声や発音の障害がでると意思表示が困難になりますが、筆談によるコミュニケーションができます。しかし、発音が悪いと聞き返されたり、誤解されることもあり話すことを制限している人もいます。
声や発音の障害のある人との接し方
@話の内容を要約して繰り返し会話がズレないように配慮する。
A落ち着いて聞く姿勢が大事。
B焦らせない。
Cことばを遮らないで最後まで聞く。
Dどうしても伝わらないときは筆談をすすめる。
発声・発語器官に麻痺がある場合、食べ物をよく噛んで飲み込む事にも障害が出てきます。(摂食・嚥下障害)
脳の両側性の疾患で出やすいと言われていますが、一側性の疾患でも障害が出ることがあります。 脳からの指令がうまく伝わらないで口や顎・舌の動きが不完全になり、噛む事や口の奥に食べ物を送り込むこと、最後のゴクンが出来ないかまたは反応が遅くなること、食べ物が気管に入りそうになりムセやすくなること、食道の筋肉が動きにくく食べ物がのどを通過しにくくなることなどの症状がでます。
発声・発語器官に麻痺が無い場合でも起こります。
@食べ物を視覚的に見落とすために一部のものしか食べない摂食障害。
A脳機能全般の低下によって、食べることの一連の動作・行� �が障害され、いつまでも
噛むのみで飲み込み動作が起きなかったり、箸と茶碗の扱いが麻痺によらない拙劣な
動作になるなどの摂食・嚥下障害などがあります。。
下の図は食べるための器官を示しています。
食べ物が入ると、口唇は閉じられ、上顎と下顎が合わさり噛み砕き、舌で食べ物をまわし、徐々に奥の方に送り込み、咽頭部に届くと嚥下反射が起こり軟口蓋は上がり、ゴクンと飲み込みます。同時に喉頭蓋が下がり気管に蓋(ふた)をして、気管に入らないようにして食道の方に流れ込みます。
人はこの食べる器官を使ってことばも発していますが図の状態は声を発しているときの状態です。
話すときは喉頭蓋は上がり気管は開き、口唇も開き空気が口から出て声になりますが、食 べるときは逆に口を閉じ気管を塞ぎます。
(言語聴覚士の仕事P66の食べるための器官)
食べる過程
食べる過程は下の図のように5つの段階があります。
先行期・・・食べ物を目で確認することで食べ物を認知する。形・硬さ・美味さなど
準備期・・・食べ物を口の中に取り込み保持する。
口腔期・・・食べ物を噛み砕き唾液と混ぜ合わせて粥状態にして奥の方に送る。
咽頭期・・・食べ物が咽頭部に達し、喉頭蓋が下がり気管を塞ぐと共に嚥下反射が起きる
食道期・・・食道の入り口の食べ物はピストン運動のように押し込まれて食道を通過する
食べ物が食道の中に入るには、口が閉じられ → 軟口蓋で鼻を塞ぎ → 口腔内が陰圧になり → 喉頭蓋が下がり気管に蓋をして → ピストン運動が起こって(トコロテンが押し出されたように)食道に入っていきます。
この過程のどこかに運動障害が出ると食べることの障害が出てきます。
構音障害の原因疾患とほぼ同じもので起こりますが、認知症によっても摂食嚥下障害が起こります。
(言語聴覚士の仕事P67の食べる過程)
空気と食べ物の通路
下の図は呼吸や発声時の空気の道と食べ物が通る道の違いを示しています
(言語聴覚士の仕事P68の空気と食べ物の通路)
高次脳機能障害は脳の血管障害や脳の外傷または脳の腫瘍など脳の疾患による障害です。
これまでは失語・失行・失認に代表されてきたが、これ以外に最近では頭部外傷後の脳機能障害がクローズアップされるようになってきた。
@失語症
A記憶障害
B注意の障害
C遂行機能障害(前頭葉症状)
D情緒・行動の障害
E失認
F行為の障害(失行)
G認知の障害(認知症・痴呆)
H意識障害
@〜Hの総称として高次脳機能障害といわれるようになってきました。
なかでも、脳外傷後の高次脳機能障害がクローズアップされるようになり、狭義では高次脳機能障害は脳外傷によるものとして使われることが多くなりました。
脳外傷でよく見られる障害としては、記憶障害、注意障害 、失語症、失認症(無視を含む)、失行症、遂行機能障害、地誌的障害行動や情緒の障害などです。
失語症については前項で取り上げているのでその他の障害の主なものについて簡単な解説をします。
(1) 行為の障害(失行)
手足の麻痺がないのに習熟された動作(服の着脱や道具の使い方)
が正しく行えなくなった状態。
手足の運動の失行、構成障害、着衣失行、動作の抑制障害などがあります。
(2) 失認(視覚・聴覚・触覚・空間・身体部位認知の障害)
視力・聴力には問題がなく見えている、または聞こえているのにそれが何であるかわからない状態。
物体失認、画像失認、色彩失認、相貌失認、半側空間認知の障害、聴覚認知の障害、触覚認知の障害、身体部位失認、病態認知障害などがあります。
(3) 記憶障害
記憶には、今見たり聞いたりしたことを覚える「記銘力」と、思い出す「想起力」とがあり、いずれが障害されても何らかの学習障害を起こします。
今話していることの理解はできるため、その場の会話は問題ありませんが話し終わると内容を忘れてしまいます。
それに比べて昔のことを思い出すことはよく保たれていることが多く、新しいことが覚えられない事が多いようです。
また、記憶には短期記憶(数秒〜数分)・長期記憶のように時間的分類と宣言記憶・作業記憶のように記憶形式による分類があります。宣言記憶はさらに意味記憶とエピソード記憶に分けられます。
エピソード記憶とは生活史など思い出に相当するもので昔住んでいた所のことなどです。
記憶障害に� �このようにいくつかの分類があり、また分類名も他にもありまだ統一されていません。
(4) 遂行機能障害
目的をもった一連の活動を有効に成し遂げるための機能で、簡単に言えば計画力と言えます。
何かをしようと段取りや手順を考える時、無駄を省き効果的に楽にできるような順番を考え、やり方を工夫します。
そのように考えられなくなると時間の見積もりができない、使い方の工夫ができない、
行動の先読みができないなどが起きます。このことを遂行機能障害といいます。
(5) 注意の障害(注意・集中力)
ボーットした感じ、表情に乏しい、ちょっとした外部の刺激に早く反応し注意が持続しない、集中できない(全般的注意障害)、課題の転換についていけないなどのことをいいます。
具体的にはミスが多い、中断しやすく長続きしない、複数のことが同時にできない、落ち着きがない、気が散り目的に沿った言動ができない、何度も指示を繰り返す必要があるなど集中して物事が行えないなどの状態を言います。
(6) 情緒・行動の障害
病後に感情(情緒)が変化して怒りっぽくなったり、無関心になったり、うつ的になったり、依存的、子供っぽくなったりすることを言います。
これが強いときには破局反応といって感情の爆発が起こり、怒り、不満、抑うつ、焦燥感などがさまざまな程度に混在した状態といわれています。
(7) 意識の障害
外界からの刺激に対する反応が低下した状態。
意識の概念は「覚醒意識」「対象意識」「自我意識」に分けて考えられます。
また、意識を支えるのは注意機能、言語を含む認知機能、記憶機能です。
軽症の意識障害では外見上はしっかりしているが返答が的外れだったり、反応までの時間がかかったりすることがあり注意障害との関連が強いといわれています。
(8) 認知機能の障害(認知症・痴呆)
認知症は痴呆を改名した名称です。複数の著しい認知障害があり、エピソード記憶(生活暦・出来事の記憶)の障害があることとされています。
新しいことが覚えられず、古い記憶の中で対応し現実との差に本人と周囲の者が混乱します。
また、失語・失行・失認・遂行機能障害なども合併しているといわれています。
言語聴覚士が仕事としている、いろいろな障害について解説してきました。
以上のような障害のことでご相談などがあれば本ホームページの相談コーナーからご相談ください。
内容によってはお近くの言語聴覚士がお答えいたします。
なお、相談内容については個人情報保護法に基づいて慎重な対応を厳守いたします。安心してご相談ください。
0 コメント:
コメントを投稿